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倉科遼を読む- 連載 - 柳都物語 】の記事
  • 7月
  • 31
  • 2007
14:13

第9話 泰造の昔語り

御国のために働きたいと出馬を決めた泰造だが、支持を受けた前進党は大政翼賛会系の政党だったのがまずかったのかあえなく落選してしまった。
生来の負けず嫌いだった泰造は、もう一度立候補すべく政治についてさらなる勉強を始めた。
そして自分の考え方に最も近い民力党の推薦を取り付けて再度立候補したのだ。
都心部は他の候補者に票固めされていると考えた泰造は過疎の雪深い農村部を重点的に回った。
そこで自分の考えを話してわかってもらおうと努力を重ねた。
泰造の打ち出す考えは太平洋側優先の政治ではなくて日本海側発展のための政治だった。
発展が遅れた日本海側を盛り上げるべく双方を結ぶ幹線道路を造ることを公約として村の青年団立ちに熱く語る泰造。
「日本に表も裏もない」という言葉がそれら青年たちの心を掴み、なんとか三位で当選することができた。
そして初登院の後、地元に挨拶に帰ったときに雅代に出会ったのだ。
「また会いたいと願っていた」その言葉にほほを赤らめる雅代。

昼になり、泰造は雅代を自分の実家に招いた。
子連れの女が家に上がり込むことに抵抗を感じて遠慮がちになる雅代。
周一におっぱいをあげながら隣室の泰造に話しかける。
立派な家だという雅代に泰造は会社が軌道に乗ったらまず親に家を建ててやろうと思っていたと話す。
雅代は泰造の背中を見ながら彼の純な心に心が安らいでいた。

  • 7月
  • 31
  • 2007
14:01

第8話 泰造の郷里

陽光の下、田園を走る一台のバス。
周一を抱いた雅代は泰造と共にバスに揺られていた。
目的地である北里村をへんぴなところだと淋しそうに言う泰造。
実際、この村でバスを降りたのも雅代たちだけだった。

自分の生まれ故郷である北里村を見下ろしながら泰造は自分の生い立ちを語った。
北里村の貧乏な百姓の家に生まれた泰造は家族を養うために尋常高等小学校を出てすぐに働きだした。
県の土木工事の仕事に就き、その仕事に熱中した泰造は十五歳の時に一念発起して東京に出てきた。
しかし、建築関係の夜学を卒業すると同時に”赤紙”が来て戦争にかり出された。
満州で結核を患い除隊されたために太平洋戦争には行けなかった。
泰造は死んでいった戦友に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになり、その分御国にできることを精一杯やろうと建築事務所を興した。

順調に仕事を続ける泰造は大口の取引先の紹介で見合い結婚をした。
長男が生まれたが病死。その後、真知子という一人娘に恵まれた。
娘が生まれた翌年、戦争が終わった。
敗戦国になりアメリカに占領されたが、もう殺し合わなくてすむという安堵感を心底感じた。
東京は焼け野原になったが、奇跡的に泰造の会社は残っていた。これを天からの使命だと感じた泰造は国の復興に努めるべく仕事に没頭した。
そしてある日、知り合いの政治家から国政選挙に出てみないかと持ちかけられたのだ。

雅代は自分の反省を語る泰造の言葉に一生懸命耳を傾けていた。

(ひとこと)うーん、一人娘の真知子さんというと・・・あの方でしょうかね。

  • 7月
  • 19
  • 2007
16:49

第7話 望外の助力

保証人になる。泰造の突然の申し出に驚く雅代は縁もゆかりもない自分のためになぜそこまでするのかを尋ねる。
雅代の働きは誰もが認めている。女将も店を譲りたいと言うし、雅代もそれを望んでいる。
それならば唯一の問題である金の都合をつければ全てが丸く収まる。だから自分が保証人になる。
そう答えた泰造だが、雅代は納得していなかった。
さらに泰造は続ける。
自分は雅代のように戦争で旦那さんを亡くして必死に生きている人間を見るとじっとしていられない。
戦争で生き残った人間である自分は苦しんでいる女性を助ける義務と使命がある。
一国の代議士となった以上、御国のために死んでいった人々の魂を弔い、残された家族の面倒を見るのは当然のことだ。
それにこの店を気に入っている。党県連や後援会の人間と込み入った話をするためにもこの店を続けて欲しい。

泰造の考えを聞いた雅代はようやく保証人の件を承知した。
一週間後、融資の話は簡単にまとまった。銀行の人は国会議員を保証人にする雅代の手腕に驚いた。
帰り道、保証人になってもらったお礼がしたいという雅代に泰造は一日休みを取って付き合って欲しいと頼む。
次の日、周一を連れて新潟駅に来た雅代。泰造は二人を連れてバスに乗り、北里村に向かった。
北里村は泰造の生まれ故郷だった。
泰造は何を見せようというのか?彼の真意を測りかねて雅代はとまどっていた。

  • 7月
  • 12
  • 2007
21:37

第6話 決意の金策

柳亭を買い取るには多額の金がいる。雅代は泣く泣く実家の魚源を手放すことを家族の墓前に報告する。
そのころ、柳亭の女将はほとんど床についたままになっていて雅代が女将の体の世話をするようになっていた。
女将は体調がいいときに少しずつ雅代に帳簿の付け方や仕入れの仕方などを教えていった。

ある日女将は雅代に一枚の紙を渡した。そこには柳亭の買い取り額が書いてあった。
女将としてはそのまま店を渡しても良いのだが、雅代の思いと周りへのけじめを考えてのことだった。
そしてその金の工面をどうするかで女将としての資質を試そうと考えていた。

市内の柳都銀行に融資の相談をしに行った雅代だが、魚源の土地だけでは必要額に満たない。
さらに、担保になる物件や保証人もない雅代に銀行は難色を示した。
数日後、泰造が柳亭を訪ねた来た。女将代理として泰造をもてなす雅代。
泰造は雅代に少し元気がないのが気になって何かあったのか聞いてみた。しかし、雅代は女将業になれていないからだろうとごまかす。
そこに芸者の小そめと紗代子が入ってきたので雅代は席を立った。
二人は雅代の話をはじめ、女将が雅代に店を譲ることを話してしまう。
担保か保証人がないと無理だと銀行に言われて考え込んでいるという話を聞いた泰造は、店を出る前に雅代を別室に呼び出した。

雅代の口から改めて事情を聞いた泰造は自分が保証人になると言い出す。

  • 7月
  • 7
  • 2007
16:50

第5話 雅代の提案

雅代に店を継いで欲しいという女将。女将は自分の生い立ちを語った。
八人兄弟の末っ子として生まれた彼女は五歳の時にこの町に里子に出された。
小学校を出てからは芸者として懸命に生きてきた。
しかし、子供を持たなかったために自分の死後この店が無くなってしまうのが心配でしょうがなかった。
そこに雅代が現れた。雅代には女将の才能がある。
自分が死んだ後も雅代が継いでくれれば安心することができる。

そういわれた雅代だが、あまりにも突然のことなので考える時間をもらうことにする。
その夜、雅代は女将の言葉をもう一度考えていた。
女将さんにとって柳亭は自分の息子のような存在。自分にとっての周一のような存在だ。
気持ちは痛いほどわかる。経済的なことを考えればいい話だ。
しかし、女将の家に養子にはいると言うことは松本の姓を捨てると言うこと。
どうすればよいのか。雅代は考え続けた。

そして数日後、雅代は女将に養子になるのを辞退すると告げる。
ありがたい話だが、松本の姓を失うことだけはできないと。
残念だと落ち込む女将に雅代は新たな提案をする。

養子になって柳亭を継ぐことはできないが、自分にこの店を買わせてもらえないだろうか。
今度は女将が驚く番だった。

  • 6月
  • 30
  • 2007
18:42

第4話 女将の思い

雅代の義母が亡くなった。昭和二十六年六月のことだった。
嫁いだ先の一家全員を亡くしてしまった雅代だが、生活が苦しい実家に帰るわけにも行かず、この家に住んで働き続けることになる。

柳亭に戻った雅代は以前にも増して精力的に働いた。厨房と仲居の間を取り持つ雅代の差配は店のものにとっても貴重なものだった。
ある日、柳亭に山田泰造が訪れた。料理を運んできた雅代は泰造に義母が亡くなったことを話す。
苦労しているという泰造に雅代は苦しいのは自分だけではない。夫が亡くなったり働けなくなっている妻はたくさんいる。もう戦争なんて無い国にして欲しいと胸の内を語る。
車に乗り込んだ泰造を見送ったその時、女将が胸を押さえて倒れてしまう。

女将は腰を患っていた。この店を成功させるために三十年間がんばってきたが、その無理がたたったのだろう。
六十をすぎた女将は、店は築いたが後継者がいないという悩みを雅代に打ち明ける。
そして雅代に自分の養子になってこの店を継いで欲しいと頼む。

  • 6月
  • 17
  • 2007
04:53

第3話 再びの邂逅

思いがけない形で再会した雅代と泰造。そこに先ほどの酔った米兵がやってきて雅代を連れて行こうとする。
その米兵を押さえて雅代を逃がす泰造。しかし力の差はいかんともしがたく、殴られてしまう。
床に倒れてもなおも反抗する泰造に怒った米兵はさらに足蹴にする。
勝負が付いているのにさらに痛めつける態度に憤慨した泰造は米兵の襟元を掴み背負い投げを打つ。
米兵は庭に投げ出されて気絶してしまった。

ようやく警察署長と泰造の後援会長らが集まってきた。無理をしないように釘を刺しておいてくれと署長に頼んで泰造は店が用意してくれた部屋に寝かされた。
巻き添えにしてしまったことを詫びる雅代。泰造はなぜこの店で働いているかを聞いて相変わらず大変な生活をしている雅代に再び金を渡そうとする。
受け取る理由がないといって断る雅代だが、必死にがんばっている女の人を見るとじっとしていられないという泰造の熱意に負けて金を受け取ることにする。
改めてお互いの名を名乗りあう二人。泰造は雅代の顔をじっと見つめていた。

そこに店の女性が入ってくる。「雅代ちゃん大変だて!あんたの姑さんが!」

  • 6月
  • 17
  • 2007
04:35

第2話 思わぬ天分

寝たきりの義母と生まれたばかりの子供を抱え行商に出る雅代。
街の料亭には進駐軍の米兵が来るようになり、魚の売り上げも少しずつ上がっていった。
かつての敵である米兵たちによって自分たちの生活が成り立っているという現実を受け入れるのは辛かったが、生きていくためには仕方のないことだと自分に言い聞かせていた。

そんなある日、ある料亭を尋ねた雅代は店の中が大忙しになっているのを目撃する。
手伝いを申し出た雅代は、全ての魚を買ってもらい、周一を預けて厨房を手伝う。
少し多めの金を渡して礼を言う女将。女将は改めてこの店で働いてくれないかと雅代に頼む。
今日の働きぶりを見て仲居の天分があると見抜いたのだ。
魚屋の仕事が終わった夜だけでいいからやって欲しいと言われた雅代はやる以上は魚屋を辞めると言って仲居として働くことを承知する。

義母に了解を取って料亭「柳亭」で働きだした雅代は、瞬く間に客たちの噂になっていた。
留袖や振袖も顔負けのべっぴんだと言われているとは知らずに働く雅代。
ある日の座敷に山田泰造が後援会長らと来ていた。
自分の仕事は開発の波に乗り遅れた新潟と東京を結ぶ交通網の整備だと力強く語っていた。
隣の部屋では進駐軍と警察関係者が芸者を呼んで大騒ぎしていた。
ダンスを強要する米兵たちに強いことが言えない警察関係者。
そこに雅代が料理を持ってきた。腕を掴み酌をしろと言う米兵に雅代は平手打ちを食らわした。
相手の米兵は激怒して雅代を追いかける。階段を下り逃げてきた雅代は山田とぶつかってしまう。

  • 6月
  • 5
  • 2007
17:09

第1話 柳の街

新潟の繁華街古街。その一角にある雅代の家では二十五歳になった寿美恵が衆議院選挙に立候補することを雅代に告げていた。
総理大臣になった山田泰造の孫として夢半ばで死んでいった祖父の無念を晴らしたいとの強い思いからだった。
寿美恵の思いは母の幸子も承知していた。雅代はやるならば必ず宰相になれと寿美恵を励ます。

その夜、雅代は月を見上げてこれまでの人生を振り返っていた。

大正11年、福島県の会津に生まれた雅代は18歳の時に新潟の松本周作という男性と結婚した。
陸軍の憲兵だった周作は太平洋戦争開戦と同時に出兵していった。雅代は家業の魚屋を守るため働いたが、戦局は悪化し魚卸業もたち行かなくなったために軍需工場で働かされる毎日だった。
そして終戦。帰ってきた夫は別人のようにやつれていた。
夫は帰国したその日から酒を浴びるように飲んだ。そして酔ってつぶやく言葉から周作が変貌した理由がわかり始めた。
進軍した中国で理不尽な暴力を強制されて心が病んでしまっていたのだ。
さらに戦犯として裁かれる日が来るのではないかという怯えも加わって周作の苦しみは増すばかりだった。
ある日酒に酔った夫に無理矢理抱かれた雅代は長男を身ごもる。
妊娠してからも家業を休むわけにはいかない。そんな雅代を尻目に周作は相変わらず酒を飲み続けた。体を壊していることをわかっていても誰も止めることができなかったのだ。
そして九ヶ月目。突然産気づいた雅代は男の子を出産する。
だれもが息子の顔を見れば周作が立ち直ってくれると思っていた。
しかし、義父が呼びに言ったときには周作は居間で倒れて血を吐いていた。
内蔵はすべてボロボロになり、周作は死んでしまった。

生まれてきた子は周一と名付けられた。雅代24歳の時であった。

後を追うように三ヶ月後義父が亡くなり、雅代は義母と赤ん坊を抱えて働くことになった。
リヤカーに魚を積んで行商して歩く雅代。皮肉なことに日本が戦争に負けたためにアメリカ人が料亭の上客となり、古街が活気づくきっかけになっていた。

そんなある日、赤ん坊を背負ってリヤカーで坂道を上る雅代を助けてくれた男性がいた。
彼は雅代の素性を知って赤ん坊のためにと金を渡して去っていった。
その男性の名は山田泰造。衆議院議員一年生の若い青年であった。

  • 6月
  • 5
  • 2007
17:07

「りゅうとものがたり」週刊漫画ゴラク連載。
毎週金曜日発売。
原作:倉科遼 作画:和気一作

柳都の異名を持つ新潟の古街(ふるまち)で生きてきた女性の姿を三代にわたって描く。