- 8月
- 6
- 2007
「No.1ホステスvs復讐の女」(2007/7/13放送)
火の国、熊本。ある夏の日。
県立清々鴻高校3年4組立花彩香(加藤ローサ)は美術室で石膏像をスケッチしていた。
ふと手を止めて石膏像の顔をまじまじと見つめる彩香。彩香は像の肩に手を乗せて、やにわに唇を合わせた。
さらに彩香の興味は下半身部分にも向かった。石膏像のペニスを不思議そうに爪ではじく彩香。カチカチという無機質な音が響く。
そこへ同級生の杉野謙一(斉藤祥太)が入ってきた。彩香の行為に驚く謙一。しかし彩香は「不思議な形だなぁ・・・間が抜けてる」とあっけらかんとした態度で感想を述べる。
父がいないために男性の体に興味があるという彩香。いくら生徒会副会長とはいえ彩香も普通の女子高生。誰でも持つような好奇心はあるのだと笑う。
「じゃあ、試してみる?」「いいよ」「えっ」「バカ、冗談よ」
笑う彩香の後ろ姿を見て謙一は今まで胸に秘めていた思いを打ち明けようとする。
蝉の音が響き渡る教室。
そこに同じく生徒会の北條梨奈(酒井彩名)が二人を呼びに来た。あわてて生徒会室に向かう二人。
役員会の議題は文化祭についてだった。しかし梨奈が突然新しい議題を提出する。
「本校の生徒が高校生であるにもかかわらずスナックで働いてるらしいんです。その人は、お客とお酒を飲んで、卑猥な行為をしているという噂です。」
それが誰なのか、謙一も彩香もわかっていた。あくまでも噂だからと話を止めようとする謙一。
しかし彩香は間違った噂があることを否定すべく宣言した
「私よ。私の家はスナックで私が手伝っているのも事実です。」
しかし、酒を飲んだり客と卑猥な行為などしていないと噂を否定した。
だが梨奈の攻撃はそれだけではすまなかった。
「だって、あなたのお母さんのお店って、カラダ売って成り立ってるって噂なんだもん。」
立ち上がり梨奈を平手打ちする彩香。
「アタシのことはなに言ってもいいよ。だけど、お母さんのこといい加減に言うのは許さんけん!」
悔しさのあまり部屋を飛び出す彩香。梨奈は彼女を呼び止め、さっきのお返しだと平手打ちを返した。
「それから、杉野君にちょっかい出すのやめてくださる?」
「ちょっかい?」
「ご存じないようだからお話ししておくけど、アタシと杉野君、婚約しているの。彼は政治家を目指しているの。アタシの家は名家、彼の家は財閥。釣り合いがとれてるの。」
「名家に財閥?今時そんな物・・・」
「フッ・・・貧乏人にはわからないでしょうね。アタシたちセレブにはセレブの価値観があるの。アンタみたいな貧乏人は一生社会の底辺で這いつくばって生きる運命なのよ!アッハッハッハ」
梨奈の高笑いが耳に残る。悔しい思いで自宅に帰ってきた彩香。
彩香の自宅は「スナック 火の国」という店だった。「火の国」は今、窮地に立たされていた。
謙一の父の会社、杉野建設が手がける地上げの対象にされ、店を手放さない母はヤクザたちの執拗な嫌がらせをうけていたのだ。
それでも彩香の母、麻里子(かとうかず子)はヤクザ達に敢然と立ち向かっていた。自分は火の国の女。どんなに苦しくても金に尻尾は振らないと彼らの出した金を投げ返す。
ヤクザ達が出て行った後の店は割れたコップなどが散らばっていた。何の心配もいらないと彩香に言う麻里子。大学に行く金ぐらいなんとかするという母に彩香は「まさか、母さん身体売ったりしとらんよね?」と聞いてしまう。
顔色が変わる麻里子。しかし、毅然とした態度で彩香の目を見つめて言う。
「こんな仕事しよるけど、ウチは一度たりとも客と寝たことなんかなかとよ。ウチは火の国の女たい。金も地位も何もなかけど、誇りだけは捨てたことなかとよ。」
麻里子の言葉に少し安心する彩香。麻里子はさらに続ける。
「寝るのは好きな男とだけ。それが女の幸せたい。特に、女の初めては。」
そして店を片付けようとする彩香を勉強部屋へ行かせた麻里子だが、突然床に崩れ落ちてしまう。
救急車で運ばれた麻里子。麻里子は肺と肝臓にガンが発見された。
今までも相当の痛みが出ていたはずだという医者。彩香は麻里子が入院するお金を惜しんで苦しさをこらえて働いていたことを知る。
そんな母を思いながら街を歩く彩香。そこへデパートから出てきた梨奈に出会う。
自分の立場を誇示するように彩香を見る梨奈。彩香の中にこらえようのない理不尽さが湧き上がる。
「豊かな物はますます豊かさを享受し、貧乏人はさらにどん底を這うように生きる。この社会は母さんにこのまま貧乏の中で、治療もままならず、ただ死んでいけというのか!」
失意の彩香。そんな彩香を待っていたのは生ゴミをぶちまけられ、「失せろ」「出て行け」と書かれた張り紙を貼られた「スナック 火の国」の有様だった。
彩香は母が守ってきたこの店は自分が守ろうと決意を固める。
高校を退学してスナックで働くことを決めた彩香。美術室で荷物をまとめていた彩香のもとへ謙一がやってきた。
母が病気だからスナックで働くと言われた謙一は彩香を抱きしめて言った。
「キミを他の男に取られたくない。」
感情を抑えきれなくなった謙一は彩香を教室の床へ押し倒した。
「だって他の男とするんだろ?スナックってそういうところなんだろ?だったらその前に僕の物にしたいんだ!」
激しく抵抗する彩香。謙一は突き飛ばされたショックで石膏像を倒してしまう。
謙一までもがそういう目で水商売を見ていたことに悲しみを覚える彩香。しかし、彼女の悲劇はそれだけではすまなかった。
物音を聞きつけた宿直の先生が教室に入ってきたのだ。あわてた謙一は服装を整えながらこう言ってしまう。
「違うんです。立花君が誘惑してきたんです!」
校長室に連れて行かれた二人。杉野の父親、杉野謙造(山下真司)も呼び出された。
誰もが権力者杉野の息子である謙一の言葉を信じて疑わなかった。一人悪者にされた彩香。謙造は彩香が金目当てで謙一を誘惑したと罵る。
そして、彩香の目の前に札束を積み上げ、今日のことは誰にも言うなと命令した。自分には権力がある。警察もヤクザも意のままに動かせると脅しをかける謙造。
彩香は立ち上がり、謙造に札束を投げつけた。
「ふざくんな!金と権力で何でも手にはいると思ったら大間違いだよ!いくら貧乏でも心は売らんわ!」
権力を持つのがそんなに偉いのか?ならば自分がその権力を持ってやる。いつかあんたらを土下座させるような人間になってやる!
そう言って彩香は校長室を出て行った。
学校を出ようとする彩香に病院から電話が入った。母の様態が急変したというのだ。
病院に駆けつけた彩香は母の病室から出てきた女性とすれ違う。その女性は銀座のクラブ「佐和」の佐和ママ(かたせ梨乃)だった。
必死に呼びかける彩香に麻里子はタンスの奥に手紙があることを伝える。そして、彩香の父は生きていると告げてそのまま息を引き取ってしまった。
手紙には麻里子が生涯をかけて愛したただ一人の男の名前があった。彩香はその名前を見て、この男もまた出世のために自分を身ごもった母を捨てたのだと知る。
熊本を出る彩香。熊本で最後に見たのは選挙演説中の梨奈の父、北條照盛(森本レオ)の姿であった。
そして彼のそばには娘の梨奈、支持者である杉野親子、そして党の幹事長である尾上雄一郎議員(伊原剛志)がいた。
「権力という物にそれほど価値があるのなら、金と権力が私と母さんを翻弄したというのなら、私はそれを絶対に手に入れてやる!そして、復讐してやる!」
大阪へ向かうバスの中、彩香は復讐の炎を燃やすのであった。
学歴も力も、お金も無かった。しかし彩香にはひとつだけ武器が残されていた。女という武器が。
この武器を使ってのし上がってやる。自分の欲望や立身出世のために女を利用し食い物にする男の上に君臨する女に。
「女帝にのしあがっちゃるけん!」
大阪道頓堀、クラブ「エレガンス」にやってきた彩香。
ママの藤本美奈(中島知子)は彩香の履歴書を眺め、綺麗な字だとほめる。こういう商売をやっていると字ひとつ見ただけでその人がわかるという美奈ママ。
一生この仕事をやっていく。この仕事でナンバーワンになって天下を取りたいという彩香。
美奈ママは彩香に興味を覚えるが、そこにエレガンスのナンバーワンホステス、麗子(小沢真珠)がやってきてバカにしたように笑った。
「こんなダサい子がナンバーワンになれるんやったら、誰でもナンバーワンになれるわ。」
麗子は彩香に近づき、母からもらったネックレスを安物だ、夜店の屋台で買ったのかとからかう。
この仕事がやりたいならファッションセンスを磨いて出直せ。クラブはスナックや安いバーとは違って高級さを売るのが商売だ。アンタみたいなどんくさいのがいると、店の名前が汚れる。
そう言って部屋を出ようとする麗子に彩香は
「ありがとうございました。今のお言葉、しっかり胸に刻んでおきます。」と切り返す。
言葉では先輩の麗子をたてたように聞こえるが、自分は絶対に逃げないという意志をぶつけた彩香。
それを聞いた美奈ママは彩香を雇うことにして、同じ年ぐらいのホステス美樹(前田愛)に面倒を見るように申しつける。
寮で同じ部屋に住むことになった美樹と彩香。
ホステスには二種類ある。ヘルプのホステスと売り上げのホステス。
客を持たないと売り上げのホステスとしてのしあがっていくことはできない。
美樹はヘルプのホステスだった。だから先輩ホステスに目をつけられないように気を配っていた。
その日彩香は麗子の接客を観察していた。麗子の人をさげすむ目は梨奈と同じ物だった。彩香は麗子よりも売り上げを上げて高みに登ろうと考える。
美奈ママが彩香を麗子の客の席に着けた。客の前では嫌味を言うわけにはいかない麗子だが、彩香の些細なミスを指摘しておとしめようとする。さらに、灰皿を変えようとした彩香を取り巻きのホステス薫(金子さやか)に命じて足を引っかけさせ、使えないホステスだと大きな声で罵った。
彩香を無視して他のホステスを焼き肉に誘う麗子。立場が弱く、麗子に逆らえない美樹。
初日ということもあって疲れてしまった彩香。店を出た彩香は偶然携帯を落としてしまった男性を見つける。
あわてて男性を追いかける彩香。しかし、男性は気がつかない。
なすすべもない彩香だが、その携帯に電話がかかってきた。持ち主だという男性の声。
「じゃあ、そこにいて」と言われて何が何だかわからない彩香の後ろから、先ほどの男性が携帯を取り上げ彩香の手を握って走り出す。
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ?」「教会」「え?」「結婚しよう!」「はぁ?」
なんのことはない、彩香はその男性にナンパされてしまったのである。
伊達直人(松田翔太)と名乗るその男性は彩香をビリヤード場に連れて行った。ビリヤードは初めての彩香。「コツは怨念を込めて打つこと!」とアドバイスされて思わず「くっそ~~麗子め~」と本音が出てしまう。
簡単に麗子とのことを説明した彩香。直人は「そんな店辞めちゃえばいい」というが、彩香は「一度逃げたら、ずっと逃げたくなる」と反論する。
彩香の芯の強さを感じた直人は彩香に少し興味を覚える。
エレガンスでは指名のない彩香を麗子が攻撃していた。指名する客がいないならナンバーワンどころかホステスとも言えない。もう辞めろ。目障りだ。
執拗な攻撃に耐える彩香に黒服が近づいてきた。彩香を指名した客がいるというのだ。
驚く麗子。彩香もまた驚いていた。
店の入り口には直人が立っていた。初めての指名と直人との再会に喜ぶ彩香。
しかし美奈ママは、直人の姿に不安を感じていた。
閉店後、美奈ママは彩香に直人との付き合いを止めろと忠告する。
最初は優しくしておいて、女の心を掴んだら牙をむく。直人はそういうタイプの男だというのだ。
そんな人ではないという彩香だが、美奈ママはなおも説得を続ける。
「この世界はな、成功するもせえへんも男次第や。どんな男掴むかで全然違うんやで。」
だが、ママの言葉は彩香には届かなかった。直人は大阪に出てきて初めてできた友達。付き合いを辞めることはできない。
店を出た彩香に直人が声をかけてきた。
直人が連れてきてくれたのは熊本料理の店「火の国」だった。直人の優しさと母の店と同じ名前に心を打たれた彩香は突然店の前で泣き出してしまう。
店に入った二人はお互いのことを語り合う。直人も両親を失ってひとりぼっちだった。
「だけど、俺はもう一人じゃない。・・・彩香がいるから。」
直人の言葉にほほを赤らめる彩香。直人はその後に「・・・なんつって」とつけて場の空気を変えてしまった。
そこへ若い女性を連れた男が入ってきた。銀龍会若頭、香田譲司(吹越満)だ。
香田は直人と彩香の姿を興味深そうに見て席に着いた。
次の日、美奈ママに呼び出された彩香。美奈ママは彩香の前に写真を差し出した。
「ごめんなさいね。こういう事したくなかったんやけど。」
そこには銀龍会の事務所から出てくる直人の姿があった。ヤクザとおぼしき男達の中にいる直人。
美奈ママはマネージャーの後藤に直人のことを調べさせていた。美奈ママの予感は当たっていた。
直人は銀龍会のヤクザだった。うろたえる彩香に「ちゃんと現実見ぃ!」と喝を入れる美奈ママ。
「売り飛ばされてから我に返っても遅いんやで。一流の女になりたかったら、一流の男に抱かれることや!」
帰り道。直人から電話が入る。無理に元気な声を作って電話に出る彩香。
彩香をドライブに誘う直人。そこには髪をオールバックにしてサングラスをかけた、彩香の知らない直人の姿があった。
ドライブの誘いをうけたものの、ママの言葉が頭から離れない彩香。道ばたの花をじっとみつめる。
とあるサウナで汗を流す入れ墨の男。銀龍会の香田だ。そこに直人が入ってくる。直人は香田に頭を下げる。
「ご苦労様です」
「おう、今度のタマは極上やないか。アレは稼ぐで。最初はクラブで搾り取って、その後は風俗へ直行やな。何億って稼ぐで、あの女。」
「任せてください。あと一押しです。」
海にやってきた直人と彩香。久々の海にはしゃぐ彩香。楽しい時間だが時折彩香の目が曇る。
彩香の腕を握り、そっとキスをする直人。しかし彩香は、それ以上の事を拒否した。
「ごめん…だけど、彩香のこと好きだから。彩香も俺のこと好きだろ?なのになんで?」
「それは……直人がヤクザだからよ」
正体が知られていると知った直人は本性を現し彩香を砂浜へ押し倒す。
「せや、俺はヤクザや。ホンマはこんな仕事してますねん。女ナンパして、風俗に売り飛ばしてな!!」
強引に彩香の服を引きちぎる直人。
「信じてたの!直人が銀龍会から出てくる写真見せられたわ。でも、信じてたの直人が言ったこと。自分の目で確かめてくれって言ったこと、アタシたち一人じゃないって言ったこと。全部嘘だって思いたくなかったの!」
「なんでそんなに信じたい?」
「好きだからよ!騙されてるかもって思っても直人に会いたいの!」
「ほな、抱かせたれや!」
「イヤ!直人に抱かれたら直人の女になってしまう。もっともっと好きになってしまう!」
「なったらええ、俺の女に!」
「イヤッ!」
彩香は直人を突き放した。
「ふざくんな!男に惚れて夢あきらめるなんてまっぴらよ!」
「夢?」
「女帝になるの。世の中を意のままに動かす力を持った女帝になるの!」
「女帝…?」
「アタシはじめてなの。だからアタシが抱かれるときは勝負するときなの。女として一世一代の勝負をするときに高く売ってやるの!だから直人に抱かれるわけにはいかないの。」
彩香の覚悟を悟った直人。直人は立ち上がり彩香の肩に上着を掛ける。
「わかった。お前の夢を応援してやるよ。」
驚いた表情で直人を見つめる彩香。
「お前の身体は抱かないけど、心抱いてやる。ずっと見守ってやるよ。」
力が抜けたように泣き崩れる彩香。直人はずっと彼女の頭をなでていた。
エレガンスに戻ってきた彩香。今日は先月の売り上げが発表されていた。
六ヶ月連続でトップは麗子だった。不景気の中、一千万を超える売り上げを上げていた。
彩香は美樹に麗子が売り上げを上げる秘訣は何なのか尋ねる。
「カラダよ」そっけなく答える美樹。カラダをエサにして客をつなぎ止め、一定額使ったら抱かせるというわけだ。
この世界は飲むかしゃべるかやらせるか。どれかひとつに長けていたら成功するとまで言われているのだ。
開店したエレガンスに客がやってきた。美濃村達吉(泉谷しげる)。「ミナミの妖怪」と言われる男である。
たくさんの会社を経営するこの男を掴まえたら店の売り上げが倍になると言われるほどの男だが、気むずかしくて特定の店やホステスを決めない主義だという。
美濃村の席に案内された彩香。彩香は社長に話しかける。
「社長にとって良いホステスというのはどういったものなんでしょうか?」
「ワシを喜ばせてくれる女や」
「どうやったら喜んでいただけるんでしょうか?」
「それを見つけるのがお前らの仕事やろ!ワシは自分の金で飲みに来とるんやで。」
「おっしゃるとおりです。じゃあ私にチャンスをいただけませんか?私、社長に喜んでいただけるようなホステスになりますから。」
「ほう。」
「その代わり」
「その代わりなんや?」
「三回までチャンスをください。」
「三回?三回通えって言うことかい!おぅ!」
「はい。」
彩香はこの時こそ勝負の時だと考えていた。
